
お酒が体に良いことは昔から経験的に知られ、ワインはいろいろな病気の治療や予防にも使われてきました。また、赤ワインに含まれる渋みの成分、ポリフェノールが体に良い効果をもたらすことも、研究によりわかっています。
次に、2.の血液を固めにくくする効果です。血液成分のひとつである血小板には、血小板同士が集まって血液を固める働きがあります。例えば、怪我で出血したときに血が止まるのはこの血小板の働きによるものですが、お酒にはこの働きを抑えて血を固めにくくする効果があります。血管の中で血液が固まって血管の壁に付着したものを血栓と呼び、血栓によって血管内が狭くなったり、詰まってしまう病気を血栓症と呼びます。脳に血栓ができる脳血栓症は程度が酷ければ死に至る病気です。
この血栓の予防にはお酒が効果的なのです。しかし、お酒を飲んでいるときは血液がサラサラ状態でも、酔いから醒めてきたときや、大量に飲酒していた人が急に飲酒を止めると、逆にリバウンド現象が起こり、血液がドロドロと固まりやすくなってきます。このような場合、脳梗塞や心筋梗塞はむしろ起こりやすくなります。しかし、フランス・リヨン国立保健衛生研究所セルジュ・ルノー博士のラットによる実験によると、アルコールの中でも赤ワインにはこのリバウンド現象がほとんどないことが報告されています。
さらに3.ストレスの解消という効果もあります。ストレスはカテコールアミンという物質の分泌を促し、諸悪の根元とも言われる活性酸素を体内で増加させ、ガンや老化をはじめ、多くの病気を誘発させます。煙草、食品添加物、残留農薬、排気ガス、紫外線、放射線、電磁波などは身体に害を与えますが、これらの物質が活性酸素を発生させているのも一因なのです。しかし、お酒を適度に飲むことでストレスが解消され、活性酸素の生成が妨げられるのです。お酒は気分転換やリラックスにも良いですね。
最近では、適度な飲酒が健康に役立つことが科学的に実証されてきています。
イギリスのマーモットの報告によると、40歳から64歳までの男性の死亡率を飲酒量の程度によって分類して10年間観察した結果、お酒を少量および中等量飲む人の死亡率は、全く飲まない人や大量に飲む人の死亡率と比較して明らかに低いことが示されました。特に心筋梗塞(心臓を取りまく冠動脈の血流が滞ることにより起こる心臓病)においては、飲酒により明らかに死亡率が減少していたのです。つまりお酒を飲むほど、心筋梗塞で無くなる率が低くなるのです。なお、マーモットの報告でいうお酒の少量とは、一日平均でワイン1杯以下、中等量は1~4杯、多量は4杯以上を示しています。
とはいえ、飲み過ぎは禁物です。過剰な飲酒を繰り返しているとすぐに脂肪肝となり、さらにはアルコール性肝炎・肝硬変、胃炎、逆流性食道炎、膵炎などを引き起こします。また食道癌、胃癌などの癌も起こりやすくなるため、飲み過ぎると死亡率は急上昇します。
健康のために良い酒量とは、成人男性の場合、1日量でビールなら大瓶1本、日本酒なら1合、ウイスキーのシングルなら2杯まで、ワインなら通常サイズのボトルで3分の1程度です。健康的なお酒の飲み方というものを意識してみましょう。

1955年、東京都生まれ。日本大学大学院博士課程卒、医学博士、麻酔科指導医、ペインクリニック学会認定医、癌研有明病院麻酔科副部長。
日本ソムリエ協会ワイン・アドバイザー、マスター・オブ・ワイン研究会会長。コマンドゥール・ド・ボルドー(ボルドー騎士団)。第1回マデイラワイン・ミッション。
自宅の地下に1000本のワインセラーを所持する。
著書に、「赤ワインのすごい薬効」「ワインの基礎知識」「ワイン物語、ラベルは語る」「がん治療 肝心なのは最初の『選択』」「ここまで『痛み』はとれる~ペインクリニックの最新医学」「大安心~健康の医学大辞典(共著)」など多数。

